【将棋戦法ミニ事典】では、昭和の定跡から最新戦法までさまざまな基本戦法を解説しています。本記事のテーマは「ノーマル中飛車対☗3八飛戦法」です。詳細は下の【テーマ図解説】をご覧ください。

テーマ図解説
テーマ図から先手は3筋の歩を交換して、☗3六飛・☗3七桂の攻撃型を目指します。先手は銀が攻めに参加しない形なので攻撃面では戦力が低いが、金銀四枚で中央を固めているため守備力が高い特徴がある。
【第1図】28手目☖6四歩の局面
◎テーマ図からの指し手①
☖6四歩(第1図)

テーマ図で後手が☖6四歩と突いて第1図。後手は次に☖6三銀〜☖7二金として木村美濃に組み替える狙いがある。他の振り飛車では高美濃囲いに組み替えて金銀三枚の堅さを主張することが多いのですが、中飛車の場合は金銀が左右に分断されているので、バランス重視の陣形を目指します。
【第2図】31手目☗3五同飛の局面
◎第1図からの指し手
☗3五歩 ☖同 歩
☗同 飛(第2図)

先手は当初の予定通り三筋の歩を交換します。ノーマル中飛車に対する袖飛車は実戦例の多い作戦で、加藤一二三九段が得意とされていた。図で後手は☖3四歩と受けるのが一番無難ですが、☗3六飛☖6三銀☗3七桂☖7二金☗2四歩☖同歩☗4五歩で先手の調子が良い。図では☖4五歩と反発する手が有力で後手がチャンスを迎えている。
【第3図】38手目☖4六歩の局面
◎第2図からの指し手
☖4五歩 ☗3八飛
☖8八角成 ☗同 玉
☖5五歩 ☗同 歩
☖4六歩(第3図)

第2図で☖4五歩の反撃には、☗3八飛と深く引き上げるのが定跡。第3図までの進行は1989年の加藤一二三九段ー羽生善治六段戦の実戦をなぞったもので、図以下は☗4四歩☖同銀☗4一角☖6五角...と進んでいる。第2図の形勢は後手がわずかに良い。
【第4図】28手目☖3一金の局面
◎テーマ図からの指し手②
☖3一金(第4図)

第4図の☖3一金は、第1図の☖6四歩に代えた手。大山康晴十五世名人が得意とされていた戦術で、攻められそうな三筋に飛車を転回する狙いがある。
【第5図】32手目☖3二飛の局面
◎第4図からの指し手
☗3五歩 ☖同 歩
☗同 飛 ☖3二飛(第5図)

第5図の☖3二飛は、先手の動きを逆用しようという狙いがある。後手は次に☖2二角と引いて飛車交換を挑むのが狙いで、飛車交換になれば陣形の低い後手が面白い。図では☗3六飛☖2二角☗3五歩と進むのが定跡で、ほぼ互角の形勢である。
【第6図】26手目☖4二金の局面
◎テーマ図で☖3二金に代えて☖4二金

第7図は、テーマ図の類似局面。テーマ図では☖3二金と上がっているが、これを☖4二金に代えた局面である。☖4二金型は2筋が手薄になる反面、中央に金を使いやすくなるメリットがある。場合によっては☖5三金〜☖6三金と高美濃囲いの構築を目指すことも可能だ。
【第7図】32手目☖3二飛の局面
◎第7図からの指し手
☗3八飛 ☖5三金
☗3五歩 ☖同 歩
☗同 飛 ☖3二飛(第8図)

☖4二金型に対しても先手は定跡通り☗3八飛〜☗3五歩と袖飛車で仕掛けていきます。後手は☖4二金と上がっている効果で☖5三金と中央に金を上がる手が可能になっている。第8図で後手は次に☖2二角と飛車交換を狙う筋がある。発想は第5図と同じで、飛車交換は後手に分がある。
【第8図】26手目☖6四歩の局面
◎テーマ図で☖5四歩に代えて☖6四歩

第9図は、テーマ図の類似局面。テーマ図の☖5四歩を☖6四歩に代えた局面である。中飛車なのに5筋の歩を突かないのは現代の目で見ると違和感があるが、昭和40年代〜50年代当時の中飛車では割とポピュラーな作戦であった。この歩を後回しにすることで、先手の急戦に対して一手早く対応できる意味がある。
【第9図】35手目☗3六飛の局面
◎第8図からの指し手
☗3八飛 ☖7四歩
☗3五歩 ☖同 歩
☗同 飛 ☖6三銀
☗3七桂 ☖3四歩
☗3六飛(第9図)

先手は例によって袖飛車から三筋の歩を交換しておきます。図で後手は☖7二金〜☖7三桂と駒組みを進めるのが普通で、先手は☗2四歩☖同歩☗4五歩と仕掛けるのが部分的な定跡です。
【第10図】36手目☖7二飛の局面
◎第9図からの指し手
☖7二飛(第10図)

第10図までの手順は、1989年の羽生善治六段ー大山康晴十五世名人の実戦の進行です。3筋は大人しく受けておいて、争点を玉頭に定めて☖7二飛と転回する指し方は中飛車の基本的な狙いの一つだ。自玉は玉飛接近の悪型になるが、舟囲いの弱点を直接攻めるため破壊力がある。実戦は玉頭攻めが炸裂して大山名人が勝利を収めている。
【結論】互角!
現代の将棋界では絶滅している化石戦法。将棋ウォーズではノーマル中飛車はたまーに見かけるが、居飛車側が穴熊にするケースが多いように思う。
覚える必要なし!