【将棋戦法ミニ事典】では、昭和の定跡から最新戦法までさまざまな基本戦法を解説しています。本記事のテーマは「ゴキゲン中飛車対☗5八金右超急戦」です。詳細は下の【テーマ図解説】をご覧ください。

〜テーマ図解説〜
テーマ図はゴキゲン中飛車対☗5八金右超急戦の定跡型のひとつ。図の☖7二玉は超急戦が指され始めた初期の頃に指されていた手で、戦場になる左辺から一路遠ざかっておく意味がある。図の☖7二玉では代えて☖9九馬の実戦例が最も多く、他に☖5四銀、☖5四歩、☖8九馬なども実戦例がある。
【第1図】23手目☗2三角の局面
◎テーマ図からの指し手①
☗2三角(第1図)

テーマ図の☖7二玉が指された1号局の将棋で、先手の中村修九段は☗2三角(第2図)と打った。超急戦の将棋での先手の基本的な攻め筋は☗2三角(第1図)、☗7五角(第3図)、☗6六香(第6図)などがあり、これらの組み合わせ方次第で定跡の骨格が決まる。図の☗2三角には☖5一金右と受ける手が部分的な定跡となっている。
【第2図】27手目☗3四角成の局面
◎第1図からの指し手
☖5一金右 ☗6六香
☖5四銀 ☗3四角成(第2図)

☗6六香に対する☖5四銀は部分的な定跡で、☗6三桂成と☗4三桂成の両方を受けている意味がある。第3図で先手は☗4三桂成の攻めが継続手になるが、後手陣もカナ駒が一枚多い守備陣なので簡単に崩れることはない。第3図の評価値は後手に+300点ほど振れる。先手は攻め方を変える必要がありそうだ。
【第3図】23手目☗7五角の局面
◎テーマ図(☖7二玉)以下の指し手②
☗7五角(第3図)

☗2三角(第1図)〜☗3四角成(第2図)では先手がよくならなかった。次は第テーマ図で☗7五角(第3図)と打つ手を見ていく。超急戦の戦型ではこの☗7五角も基本的な攻め筋のひとつで、次に☗3一角成からの二枚替えを狙っている。
【第4図】28手目☖7四歩の局面
◎第3図からの指し手
☖2一歩 ☗同 竜
☖2二銀 ☗1一竜
☖7四歩(第4図)

☗7五角の受け方としては、☖2一歩☗同竜と竜を近づけてから☖3二銀と上がるのが手筋。一歩を犠牲に手番を握れるのは大きいが、歩切れになるので将来☖5七歩と叩く筋がなくなるなど攻撃面で不安が残る。第4図までの手順は一例で、形勢は互角ぐらいと思われる。
【第5図】23手目☖6六香の局面
◎テーマ図(☖7二玉)以下の指し手③
☗6六香(第5図)

次はテーマ図で☗6六香(第5図)と打つ手を見ていく。この手も超急戦の戦型では部分的な定跡で、これに後手は☖5四銀と打つ手がワンセットの受けになっている。図で☖5四銀の受けに☗2三角と打つと、☖5一金☗3四角成で第2図に合流する。なので今度は別の攻め方を考えてみる。
【第6図】25手目☗2二歩の局面
◎第5図からの指し手
☖5四銀 ☗2二歩(第6図)

第6図の☗2二歩では☗7五角も考えられる。その場合、後手は①☖5一飛と、②☖2一歩☗同竜☖2二銀のどちらか受け方を選べる。☗2二歩は☖同飛なら☗同竜☖同銀☗5三飛の狙い。部分的には受けが利かないので、図で後手は反撃に転じるよりなさそうだ。
【第7図】32手目☖2五飛の局面
◎第6図からの指し手
☖5七歩 ☗同 金
☖5五銀 ☗同 歩
☖同 飛 ☗5六歩
☖2五飛(第7図)

☖5五飛〜☖2五飛は先手からすると嫌な筋。次の☖2九飛成は許せないので、先手は☗1八角と反発力のある手で受ける。もしも図で後手玉が☖6二玉型であれば、☗3六角が猛烈に厳しい。☖7二玉型なら☗6三角成には☖8二玉で問題ない。
【第8図】23手目☗6三桂成の局面
◎テーマ図(☖7二玉)以下の指し手④
☗6三桂成(第8図)

テーマ図では☗6三桂成(第8図)と強襲した実戦例もある。☖同玉と危険地帯に引きずり出して、☖6六香の田楽刺しに期待している。公式戦1号局はとあるタイトル戦の大勝負で指されたもので、この一手に75分の長考が記録されているので事前に準備していた研究手ではなさそうに思える。
【第9図】27手目☗6六香の局面
◎第8図からの指し手
☖6三同玉 ☗1八角
☖5四歩 ☗6六香(第9図)

☖6三同玉に対して先手の継続手は☗1八角。☖5四歩と打たせてから☗6六香と打てば、後手は合い駒の歩がないという理屈だ。図で☖6六同馬と切るのはまだ早く、一時凌ぎに過ぎない。結局図では☖7二玉と元の位置に戻るのが最善となる。
【第10図】33手目☗2三歩の局面
◎第9図からの指し手
☖7二玉 ☗2二歩
☖5一金右 ☗2一歩成
☖4二銀 ☗2三歩
☖7四桂(第10図)

第10図までの手順は、2014年の棋王戦五番勝負☗三浦弘行九段ー☖渡辺明棋王戦の実戦の進行。先手は次に☗2二歩成〜☗3一と寄のわかりやすい攻めがある。一見すると後手苦戦を思わせる局面で、☖7四桂(第10図)が先手の急所を突いた。第10図の形勢は後手に+700点ほど振れる。