【将棋戦法ミニ事典】では、昭和の定跡から最新戦法までさまざまな基本戦法を解説しています。本記事のテーマは『ゴキゲン中飛車対超速☗3七銀戦法』です。詳細は下の【テーマ図解説】をご覧ください。
【テーマ図】ゴキゲン中飛車☖3二金型基本図

〜テーマ図解説〜
テーマ図はゴキゲン中飛車対超速☗3七銀戦法の定跡型で、後手が☖5六歩と動きを見せた局面。先手に☗6六銀と出られると5筋の位を維持するのが難しくなるため、☗7七銀の瞬間に☖5六歩と交換するのが定跡化されている。
テーマ図では☗同歩☖同飛に①☗5五歩と、②☗6六銀が実戦例が多い。①☗5五歩は飛車の退路を封じて飛車を捕獲する指し方で、この定跡の流行初期に流行った手。現代では①☗5五歩の変化は後手良しが定説で、②☗6六銀が最善手とされている。
【テーマ1-1】飛車を捕獲する定跡
【第1図】テーマ図で☗同歩☖同飛☗5五歩
◎テーマ図からの指し手①
☗5六同歩 ☖同 飛
☗5五歩(第1図)

第1図の☗5五歩は飛車を捕獲する指し方で、2010年〜2011年頃に流行った定跡です。図では次に☗6六銀〜☗5八金右〜☗5七金まで進むと後手の飛車は完全に捕まります。部分的には先手成功の図に見えますが、実際はそう簡単ではありません。図で後手は☖同飛と取ってしまう手がある。
【第2図】☖5五同角の局面
◎第1図からの指し手
☖5五同飛 ☗同 銀
☖同 角(第2図)

☗5五歩で後手が困ったようでしたが、強く☖同飛と取る手がありました。第2図の後手は駒損で普通は後手が失敗したとされる図。しかしこの場合は飛車取りが残り、陣形の差が大きく後手も十分戦える形勢となっています。図では飛車取りの受け方として①☗1八飛と、②☗1八飛打が考えられる。
【第3図】☗2八銀の局面
◎第2図からの指し手①
☗1八飛 ☖2八銀(第3図)

☗1八飛は持ち駒の飛車を使わずに受ける指し方です。これには☖2八銀(第3図)と打つ手が最善手で後手が少し良いとされています。図では☗4六歩☖同角☗6八銀という受け方が定跡になっていて、形勢は先手がやや苦しいとされています。
【第4図】☗1八飛打の局面
◎第2図からの指し手②
☗1八飛打(第4図)

☖5五同角(第2図)に☗1八飛と逃げる手は☖2八銀で後手が指せる。なので先手は☗1八飛打(第4図)と飛車の重ね打ちで受ける手が最善手と言われています。図では☖5六歩と垂らす手が定跡で、以下☗2四歩☖同歩☗同飛☖2三歩☗2五飛で互角の形勢。
【第5図】☗2五飛の局面
◎第4図からの指し手
☖5六歩 ☗2四歩
☖同 歩 ☗同 飛
☖2三歩 ☗2五飛(第5図)

第5図は、先手が2筋の歩を交換して☗2五飛と引いた局面。図では☖4四角と引く手と☖1九角成と切る手がある。第5図の形勢は互角。しかし実戦的には振り飛車が勝ちやすいとされている。次に解説する☗6六銀が有力とわかって、この飛車捕獲定跡は廃れてしまった。
【テーマ1-2】二枚銀で押さえ込む定跡
【第6図】テーマ図で☗同歩☖同飛☗6六銀
◎テーマ図からの指し手②
☗5六同歩 ☖同 飛
☗6六銀(第6図)

第1図の☗5五歩の変化が後手指せるということで、代わって主流になったのが☗6六銀(第6図)の二枚銀戦法です。現在はこちらの☗6六銀が主流となっています。図では次こそ☗5五歩があるので、後手は飛車を引く一手になる。
【第7図】☗5五銀右の局面
◎第6図からの指し手
☖5一飛 ☗5五銀右(第7図)

☗6六銀に後手は☖5一飛と一段飛車に引き上げます。そこで☗5五銀右(第7図)と中央を制圧しにいく手が実戦例の多い手です。後手はゆっくりしていると、次に☗5四歩〜☗5八飛で押さえ込まれてしまいます。図では①☖5四歩と、②☖4二銀があるので順番に見ていきます。
【第8図】☗4五銀の局面
◎第7図からの指し手①
☖5四歩 ☗4六銀
☖6四歩 ☗7七角
☖4二銀(第8図)

手順中後手の☖5四歩は、先手から☗5四歩と打たれる手を消した意味がある。一度交換した歩を打つので抵抗感はありますが仕方がないと見ている。第8図までの進行は一例で、ここから先手が攻めて後手が受ける展開になる。
【第9図】☖4二銀の局面
◎第7図からの指し手②
☖4二銀(第9図)

戻って第7図では☖4二銀もある。やはり☖5四歩と打つのでは悔しい、ということで歩を打たずに銀を前線に繰り出していく。図では先手から☗5四歩と打たれて拠点を作られると、後手が苦しいと思われていましたが...。
【第10図】☗5八飛の局面
◎第9図からの指し手
☗5八飛(第10図)

☖4二銀と上がった第9図ではすぐに☗5四歩と打つ手もありますが、先に☗5八飛と回っておく手がわずかに勝る。次に☗5四歩と打てば、先手の模様が相当に良い。先手の二枚銀が中央を制圧しているので、後手は大駒をさばいて勝負することができません。
【第11図】☖2四歩の局面
◎第10図からの指し手
☖2四歩(第11図)

先手は☗5四歩や☗5九金右、☗3七桂など指したい手が多く手に困らない。後手はゆっくりしていても受け一方で良くならないので、☖2四歩と動いて手を作っていきます。AIの評価値では60%ほど先手に形勢が振れているので、先手有利は間違いなさそうではある。
【第12図】☗2五同飛の局面
◎第11図からの指し手
☗2八飛 ☖2五歩
☗同 飛(第12図)

☖2四歩に対して先手は☗2八飛と2筋に戻る。☖2四歩にはシンプルに☗同歩と取る手もありどちらが勝るかは難しい。この辺りの変化は菅井竜也八段の『菅井ノート(後手編)』が詳しいので、気になる方は...。
【第13図】☗3八飛の局面
◎第6図からの指し手②
☖5一飛 ☗3五歩
☖同 歩 ☗3八飛(第13図)

第6図では、長い間☗5五銀右(第7図)が最善手と思われていたのですが、最近のAI研究で☗3五歩〜☗3八飛と袖飛車にする指し方も有力だと判明しています。3筋を突き捨てず、単に☗3八飛と寄る手もありますが、余計な変化を削ぎ落とす意味でも先に突き捨てておきます。
【第14図】☗3五飛の局面
◎第13図からの指し手
☖6四歩 ☗3五飛(第14図)

3筋を突き捨てておいた効果で、☖6四歩に対して☗3五飛とスムーズに取ることができる。3五の歩は飛車で取るのが正しく、銀でいくと☖6五歩で困る。第14図をAIで検討させると、評価値は先手に60%ほど振れる。
【第15図】☖4三銀の局面
◎第14図からの指し手
☖4二銀 ☗9六歩
☖9四歩 ☗3七桂
☖4四歩 ☗5九金右
☖4三銀(第15図)

第15図の形勢は先手有利。☗5九金右は☖3八歩と垂らされる筋に、☗4九金と戻る手を残している意味がある。実戦的にはまだ簡単ではないと思われますが、振り飛車側は相当に勝ちづらい局面と思える。以上、先手に有力な指し方が2つあるのが大きく、☖3二金型は現在ほとんど見かけなくなっている。