【将棋戦法ミニ事典】

【将棋戦法ミニ事典ー矢倉・雁木編】矢倉右四間飛車

【将棋戦法ミニ事典】では、昭和や平成の時代に指されていた古い定跡から令和の最新戦法までさまざまな基本戦法を解説しています。詳細は下の「テーマ図解説」をご覧ください。

テーマ図の解説

テーマ図は先手の矢倉に対して後手が右四間飛車で対抗する作戦。プロの公式戦では1990年頃から2000年代に掛けて実戦例が多く、後手番の棋士には加藤一二三名誉十段の名前が並ぶ。後手の囲いはテーマ図の美濃囲い型の他に、☖3二金・☖4二銀・☖5二金(☖5一金)のカニ囲い型もある。

【第1図】右四間飛車の基本の駒組み

第1図の後手陣が右四間飛車の駒組みの第一段階。☖6四歩と6筋の歩を突き、☖5四銀と腰掛け銀に構えるのが大事なところです。右四間飛車はとても破壊力がある戦法なので、受ける側としては油断は禁物です。一般的に先手側はこの後☗5八金〜☗6七金右と駒組みをするケースが多く、この駒組みは対右四間飛車では定跡化されています。

対して後手陣、右四間飛車側の囲いは「美濃囲い型(第2図)」と「カニ囲い型(第3図)」の二つが主流です。どちらの陣形も一長一短でどちらも有力。公式戦の棋譜を調べたところ大体どちらも同じぐらい指されているようでした。

【第2図】右四間飛車基本図②後手美濃囲い型

第1図からお互い自然に駒組みを進めていくとやがて第2図の局面になります。第2図は後手美濃囲い型の基本図で、最近の右四間飛車の将棋は「対矢倉左美濃急戦」の影響もあってかこちらの美濃囲い型が多数派と感じます。第3図で先手は①☗4六銀と、②☗4六歩が考えられる手で、①☗4六銀は次に☗3五歩の仕掛けが狙い。②☗4六歩は次に☗3七桂〜☗4五桂の仕掛けが狙い。

【第3図】右四間飛車基本図①後手カニ囲い型

第3図は後手陣が「カニ囲い」に組んだ基本形です。第3図からは☖5一金と寄る手と☖5二金と上がる手があり、☖5一金型は金銀の連携が良く急戦に強い形。☖5二金型は☖4四歩〜☖4三銀(☖4三金右)と囲いを発展させる含みがある。美濃囲いに比べると3三の地点を攻められた時に守備力が少し強い意味がある。

【第4図】右四間飛車の猛攻開始

テーマ図以下の指し手①
☗4六銀 ☖6五歩(第4図)

☗4六銀には☖6五歩(第4図)と仕掛けるのが部分的な定跡。先手陣はこの瞬間6筋の守りが薄いので後手がここで仕掛けるのは自然です。序盤で歩がぶつかったら取る手から考えるのが基本ですが、第4図で☗6五同歩と取るのは☖8八角成☗同玉☖6五銀で後手良し。

第4図では☗5七銀上と銀を上がって受けるのが正着で、以下☖6六歩☗同銀☖6五歩には☗5五銀左とすれば良い。右四間飛車の仕掛けには金銀の厚みで受け止めるのが正しい対処法で、この辺りの攻防は右四間飛車定跡の要なので必ず覚えておこう。

【第5図】☖6五歩には☗5五銀左とぶつける

第4図以下の指し手①
☗5七銀上 ☖6六歩
☗同 銀 ☖6五歩
☗5五銀左(第5図)

第4図から第5図以下辺りの攻防は、後手の攻めに先手の受けと言う構図になります。受けが苦手な人は不安に思うでしょうが、後手の攻め筋も多くはないので定跡をそのまま暗記してしまいましょう。

第5図以下☖5五同銀☗同歩☖6六銀には☗5六金(☗6八金引)と逃げておいて先手有利。☖5五同銀☗同歩☖7五歩☗同歩☖6六銀には☗7六金と上がって受け切りを目指します。

【第6図】☖6五銀には☗同銀

第4図以下の指し手②
☗5七銀上 ☖6六歩
☗同 銀 ☖6五銀
☗同 銀(第6図)

第4図以下☖6五歩のところでは☖6五銀とぶつける手もあります。☖6五銀には☗5五歩と角のラインを止める手も古い定跡書には書かれていますが、☗6五同銀(第6図)と取ってしまうのが最善の対応となります。

第6図で☖8八角成☗同玉☖6五飛と単調に進めるのは、☗6六歩と普通に受けておけば先手有利。従って第6図では☖8八角成☗同玉に☖6六歩☗同金☖3九角と局面を少し複雑化させて攻めていくことになりますが、☗6八飛と回って先手有望となります。

【第7図】☗4六歩と突く指し方

テーマ図以下の指し手②
☗4六歩 ☖6五歩
☗同 歩(第7図)

第7図は先手が☗3七桂〜☗4五桂の仕掛けを狙う指し方。後手の攻撃形が飽和状態なので☖6五歩と仕掛けてきますが、この場合は☗同歩(第7図)と取るのが正着です。

第7図から☖6五同銀は☗6六歩で何も起きないので、後手は☖8八角成☗同玉に☖3三角としてきます。

【第8図】角には角の受け

☖3三角の王手に対しては☗7七桂や☗7七角も見えますが、正しい受け方は☗6六角(第8図)と打つ手。もし9筋の突き合いが入っていない場合は、☖3三角に☗9八玉とかわす手が有力になります。

第8図からは☖6六同角☗同銀☖3三角☗7七桂☖6五桂☗7三角と進みます。

【第9図】右四間飛車中川流の基本図

第9図の後手陣は中川大輔八段の得意とする作戦で「中川流」の呼び名がある。右四間飛車の中でも攻撃に特化した作戦で、一気に寄せ合いに突入する変化もある。第9図までの手順は、第1図から☗5八金☖6五歩☗6七金右☖6六歩☗同銀☖6五歩☗5五銀☖4二金(第9図)。後手が望めば先手には変化の余地はほぼないので、再現性は結構高いと思われる。

第9図はまだ定跡の範囲内で、☗5四銀には☖8八角成☗同金☖5四歩のあと☗6六歩が厳しい。先手から銀を取るのは先手陣を乱されるのでまずいようだ。第9図で先手は☗6九玉と居玉を解消する手が定跡で、5五の銀は後手に取ってもらう方が良い。

【第10図】中川流☖4二金の意味

第9図以下の指し手
☗6九玉 ☖5五銀
☗同 歩 ☖5四歩(第10図)

第10図の☖5四歩が中川流の主眼となる一手。自分の玉頭から頭突きする強烈な一手で、図で☗同歩なら☖8八角成☗同銀に☖6六歩が厳しい反撃になる。このとき、☖4二金と上がっている効果で☖5三歩成がない。第10図では☗5六金と対応する手が定跡のようだが、☗5六金には☖4一玉と寄る手が好手で後手十分の形勢になる。

では第10図の局面が後手良しかと言うとそうでもない。第10図をAIに検討させると、☗7九玉を最善手と示す。以下☖5五歩☗5四歩☖5二金上☗2六歩☖6六銀と進んで先手が少し良いらしいが、先手玉頭に拠点が作られてしまうため実践的には先手苦戦にも思える。

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