将棋の公式戦における最短手数の将棋で、10手で終局したという記録がある。
は、どういうこと?と思われる方もおられると思いますが、ネット界隈では有名な将棋である。
この佐藤大五郎将棋をのぞき、一局の将棋として成立しているであろう最短手数の将棋は27手という記録がある。
ちなみに、最長手数の将棋は2018年の中尾敏之五段ー牧野光則五段戦(竜王戦)の420手だ。
27手で投了に追い込まれる将棋とは一体・・・。
27手で快勝した将棋①:☗塚田泰明八段ー☖田丸昇八段戦(1992年・天王戦)
27手という史上稀に見る短手数で終局した将棋を解説したい!
1992年の天王戦という棋戦(持ち時間は各3時間)で先手は塚田泰明八段、後手は田丸昇八段である。
このとき塚田八段は27歳のA級棋士、田丸八段はB級1組在籍の41歳。
バリバリのトップ棋士同士の将棋である!
戦型は相掛かりの将棋となり、図の局面を迎える。
初手からの指し手は☗2六歩☖8四歩☗2五歩☖8五歩☗7八金☖3二金☗2四歩☖同歩☗同飛☖2三歩☗2六飛(上図)。
ごくごく普通の相掛かりの出だしで、先手が飛車先の歩を交換し四段目に飛車を引いた局面である。
ここまでの手数は11手。
これといって、なんの変哲もない出だしだが・・。
上の図からの指し手。
☖6二銀☗1六歩☖3四歩☗7六歩☖5四歩☗3六飛(下図)
お互いに角道をあけたところで先手が☗3六飛と寄り、3四の歩を取るアクションを見せた局面。
ここまでの手数は17手。
3四の歩を守るには☖3三金と上がるくらいだが形が悪い。
そこで後手の田丸八段は、3四の歩は諦めて☖5五歩(下図)と指した。
これに先手は☗3四飛(下図)と歩をかすめ取る。
歩得の先手が少し良い感じもするが、まだまだこれからの将棋。
ここで後手も飛車先の歩を交換する動きを見せる。
上の図から☖8六歩☗同歩☖同飛に、先手は☗9六歩と端歩を突いた(下図)。
この手に対して田丸八段の指し手は☖4四角(下図)。
この角上がりは、
①先手の飛車の動きを制限できる。
②次に☖3三桂と形よく活用する。
などの狙いがある。
はずだったが・・。
先手☗9七角!(下図)
普通ならこの角ののぞきは☖8九飛成があるので成立しませんが・・。
☖8九飛成☗3二飛成(下図/投了図)
投了図から☖3二同銀は☗4二金の一手詰めがある。
後手は6筋の壁型が、玉の逃げ道を塞いでしまっている。
まで、27手で塚田八段の勝ち。
27手で終局した将棋②:☗鈴木照彦七段ー☖滝誠一郎七段戦(順位戦B級2組/1992年)
もう一局、27手で終局した将棋があるので解説したいと思う!
こちらも1992年の将棋で、先手が鈴木輝彦七段、後手が滝誠一郎七段。
お互いに持ち時間が6時間もある順位戦である。
午前10時に始まった将棋は、横歩取り☖3三桂戦法の戦型となった(下図)。
いたって普通の定跡型の出だしである。
ここから後手がいきなり動きを見せる。
☗3六飛☖8四飛☗2六飛☖4五桂(下図)。
お互いに飛車の位置を安定させて駒組みを・・と思いきや、後手がいきなり単騎の桂跳ねで仕掛けた!
先手は☖5七桂成を受ける必要があるが、正解はなんだろうか。
この手が受けづらいと見たが果たして・・・。(不穏な空気)
先手の選択は☗5六飛!
5七の地点を受けつつ、☗5三飛成の先手にもなっている。
後手は☖6二玉と一旦受けまして。
先手も☗5八玉。
☖8六歩の垂らしは☗2二角成〜☗8八歩で受かる。
☖2四飛に☗2八歩(下図)
先手は☗4六歩から桂馬を取りにいく楽しみがある。
上の図から☖4二銀☗3八金(下図)と進んだ局面で後手が投了。
まで、27手で鈴木輝彦七段の勝ちとなった。
タイトル戦における最短手数の記録
タイトル戦における最短手数の将棋は1994年の棋聖戦、谷川浩司王将ー羽生善治棋聖戦の49手。
二日制のタイトル戦では2020年の竜王戦での52手が最短手数となる。