【定跡講座】横歩取りの奇襲☖4五角戦法の攻略法

横歩取りの奇襲戦法で☖4五角戦法と言う作戦がある。将棋通の方ならご存知かもしれませんが、羽生善治九段が小学生のころに得意としていた作戦である。正しく指せば先手有利が通説の定跡ですが、対応をひとつ間違えると一瞬で悪くなる。プロの公式戦では1991年ごろを最後に30年以上現れていませんが、アマチュアの将棋ではいまだに見かける作戦なので対策を万全にしておこう。

☖4五角戦法の基本定跡

それではまず☖4五角戦法の基本定跡から。図の局面が☖4五角戦法のスタート地点。ここから☗2四飛☖2三歩☗7七角☖8八飛成☗同角☖2四歩☗1一角成と進んで次の図。

☖4五角戦法の攻め筋は4パターン

ここからはこの局面を基本図として解説に移ります。かなり手も進んでいますがまだまだ基本定跡の範囲内。☖4五角戦法の攻め筋は、この局面から主に4パターンに分かれる。この辺りの詳しい解説が必要な方は「羽生の頭脳」「横歩取り超急戦のすべて」を読んでください。

【☖8七銀】銀のタダ捨ての変化

図の☖8七銀には、☗7七馬と引く手が定跡とされています。「羽生の頭脳」「横歩取り超急戦のすべて」でも、☗7七馬の手順を最善と示している。図で☗8七同金は☖7九飛で後手良しが通説なのだが、将棋AIは☗8七同金と取る手を最善と示す。

まずは従来の定跡である☗7七馬と引く手をおさらいしておく。この手は1982年に中原誠王位が指した手だ。ここで☖7六銀不成と銀を捨てるのが好手で、以下☗6八馬☖8八歩☗7七歩☖6七銀成☗同金☖8九歩成と進むのが定跡とされている手順。

これが従来の定跡手順。ここで☗5六歩と突く手が有力で先手有望が結論。・・・。が、将棋AIの評価値は先手にプラス100前後と、ほとんど互角の数値を示す。先手はどこかで手を誤ったのか。あるいは最善を尽くしての結果なのか。

局面をさかのぼって、☖8七銀を☗同金と取る手を解説する。「羽生の頭脳」では以下☖7九飛☗6九香☖6七角成☗5八銀☖同馬☗同金☖7八銀(次の図)で先手不利と、羽生九段の当時の研究手順が記されている。

「羽生の頭脳」で先手不利と結論付けられている局面ですが、ここで☗6八金と寄る手がしぶとい手で先手が優勢になる。将棋AIの評価値を見ても先手にプラス1000点ほど振れる。

【☖6六銀】歩頭銀の変化

☖6六銀と打つ手も定跡のひとつ。☗同歩と銀を取るのは☖7八角成があるのでこの銀は取れない。寄せ合いで勝ちに行くのなら☗3三香成。丁寧に受けに回って勝ちに行くのなら☗5八金と上がる手も有力。

ここからの手順は名著「羽生の頭脳」の定跡をご覧いただこう。☖6六銀以下、☗3三香成☖6七角成☗同金☖同銀成☗6八歩(図)と進んで図の局面。後手は攻め駒が少ないので変化する余地はない。ここから☖7九飛☗4八玉☖5七成銀☗同玉☖4九飛成☗3二成香☖同銀☗8三角と進んで次の図。

最終手、図の☗8三角が攻防に利いた好手で先手有望な終盤戦。現状後手玉には☗4二銀から長い詰みがある。☖5九竜の合い駒請求には☗5八金と投入するのが正解で先手勝勢。先手玉はほとんど裸の状態でかなり薄いように見えるが、二枚の角の利きが強力なので見た目以上に防御力はある。

もうひとつ、☗6八歩と打つところでは☗6九飛(図)と打つ手もある。この手を解説している本はなかったが、将棋AIは☗6八歩に代えてこの手を最善と示す。ここで①☖8七飛は☗8八歩、②☖6四飛は☗6五歩☖同飛☗7七桂、③☖5七成銀は☗5八歩☖6八金☗同飛☖7九飛☗6九金☖6八成銀☗同玉☖8九飛成☗7八銀でいずれも先手優勢。