【将棋戦法ミニ事典】では、古今東西さまざまな基本戦法を解説しています。
本記事のテーマは『先手中飛車対☖5四歩型』です。詳細は下の【テーマ図解説】をご覧ください。
【テーマ図】先手中飛車対☖5三銀型〜☖4四歩の変化〜

〜テーマ図解説〜
テーマ図は先手中飛車対☖5三銀型の定跡型。お互いに自然に駒組みを進めていくと、テーマ図の一手前の局面で後手の指し手が分岐する。本記事では☖4四歩を解説するが、他に☖4二銀上、☖4二金上、☖4二金寄、☖2四歩などがある。
テーマ図の☖4四歩は持久戦を目指した手。ここから後手は居飛車穴熊に組むのが理想となる。ただし手数が掛かるため先手の仕掛けには十分注意する必要がある。テーマ図では①☗5五歩(第1図)、②☗5七銀(第8図)、③☗3六歩(第17図)の3つが有力。順番に解説していく。
【第1図】テーマ図で☗5五歩の変化
◎テーマ図からの指し手①
☗5五歩(第1図)

まずはテーマ図で☗5五歩(第1図)の変化を見ていきます。後手が☖4四歩と突いて角道を止めたので、先手は☗5五歩と一歩交換しておく。5筋の歩を切ることで飛車先を軽くしておき、☗5七銀〜☗5六銀のルートを作った意味もある。
【第2図】☗5九飛の局面(互角)
◎第1図からの指し手
☖5五同歩 ☗同 飛
☖4三金 ☗5九飛(第2図)

☗5五歩☖同歩☗同飛に、後手は☖4三金と上がって上部に備えます。この手ではすぐに☖5四歩と受ける手もありますが、結局同じ形に合流することになる。
【第3図】☖2二玉の局面(互角)
◎第2図からの指し手
☖5四歩 ☗5七銀
☖3三角 ☗5六銀
☖2二玉(第3図)

第3図は後手が居飛車穴熊模様の駒組みを進めている局面。先手は飛車を一段目まで引いて安定させておき、☗5六銀型の好形を作って攻撃体制を整えていきます。ここから後手は☖1二香〜☖1一玉〜☖2二銀と三手指せばひとまずは安心だが...。
【第4図】☗5五歩の局面(互角)
◎第3図からの指し手①
☖4五歩 ☗同 歩
☖5五歩(第4図)

第4図は先手が4筋と5筋を絡めて仕掛けた局面。居飛車穴熊に組まれる前に動いて、ポイントを稼いでおきたいが果たして...。
【第5図】☖6四金の局面(後手有利)
◎第4図からの指し手
☖4四銀 ☗5四歩
☖同 金 ☗5五歩
☖6四金(第5図)

第4図でいきなり☗4五歩☖同歩☗5五歩の仕掛けは、☖4四銀とかわす手が好手で攻めはヒットしない。第5図まで進むと先手は5筋の位を確保したものの、成果をあげたかと言うと微妙ではある。第5図は後手有利。先手はすぐに仕掛けてもうまくいかない。
【第6図】☗5八金左の局面(互角)
◎第3図からの指し手②
☗5八金左(第6図)

居飛車穴熊を阻止しようと、いきなり急戦を仕掛けてもうまくいかないことがわかりました。次は☗5八金左(第6図)と上がる手を見ていきましょう。
【第7図】☖3二金の局面(互角)
◎第6図からの指し手
☖1二香 ☗3六歩
☖1一玉 ☗3七桂
☖2二銀 ☗4七金
☖3二金(第7図)

第7図まで進んで先手は高美濃囲い、後手は居飛車穴熊が完成しました。形勢は互角でこれからの将棋であるが、後手としては居飛車穴熊が完成しており不満はなし。先手としては主張が少なく、序盤でもっと成果を挙げられなかったのだろうか。次はテーマ図で☗5七銀を見ていきます。
【第8図】テーマ図で☗5七銀の変化
◎テーマ図からの指し手②
☗5七銀(第8図)

第8図は、テーマ図で☗5七銀と上がった局面。次に☗6六銀と上がり、中央で動く手を狙いにします。ここでも後手は☖4三金〜☖3三角〜☖2二玉と、居飛車穴熊を目指す駒組み。
【第9図】☗4五歩の局面(互角)
◎第8図からの指し手①
☖4三金 ☗6六銀
☖3三角 ☗5五歩
☖同 歩 ☗4五歩(第9図)

第9図は先手が☗5五歩☖同歩☗4五歩と仕掛けた局面。最初の変化で出てきた第4図の局面と比べると、先手の仕掛けが一手早いことがわかる。
【第10図】☗4四歩の局面(互角)
◎第9図からの指し手
☖4五同歩 ☗5五銀
☖5四歩 ☗4四歩(第10図)

第10図は☖5四歩に☗4四歩と打った局面。焦点の歩の手筋で、後手は☖同銀と取るよりない。
【第11図】☗5四銀の局面(互角)
◎第10図からの指し手
☖4四同銀 ☗5四銀(第11図)

☖4四同銀に先手は☗5四銀と歩の方を取る。先手がうまく攻めているように見えるが、飛車角銀だけの攻めなので致命傷にはなっていなそうではある。第11図で後手は☖同金、☖4二金引、☖4二金上、☖4二銀、☖5五歩などの受け方があるが。
【第12図】☖4三同銀の局面(後手良し)

第12図まで進むと、先手の攻めの銀と後手の守りの金の交換になった。先手がポイントを挙げているようにも見えるが、一歩損しているのは痛い。動いた割に成果があがらず、形勢は後手良し。次は別の指し方を見ていく。
【第13図】☗4八飛の局面(互角)
◎第8図からの指し手②
☖4三金 ☗3六歩
☖3三角 ☗4八飛(第13図)

第13図は、後手の居飛車穴熊模様に対して先手が☗4八飛と寄った局面。角のラインを生かして居飛車穴熊を牽制して、4筋からの攻めを見ている。
【第14図】☗5八金左の局面(互角)
◎第13図からの指し手①
☖2二玉 ☗3七桂
☖3二金 ☗5八金左(第14図)

第14図で☖1二香には☗2五桂と跳ねる手が厳しく先手有利。第14図では☖2四歩と突くのがこの場合の手筋だが、☗2六歩☖1二香☗2五歩☖1一玉☗2四歩と仕掛けて先手ペースの戦いになる。
【第15図】☖4二銀の局面(互角)
◎第13図からの指し手②
☖6四銀 ☗6六銀
☖4二銀(第15図)
後手は居飛車穴熊に組むのが危険となれば、☖4二銀と妥協する指し方がある。この辺りは定跡化がしにくい局面なので、お互いに手将棋模様になる。
【第16図】☖7二飛の局面(互角)
◎第15図からの指し手
☗5八金左 ☖7四歩
☗4七金 ☖7二飛(第16図)

第16図までの進行は一例。こうなれば先手陣の高美濃囲いの方が堅く、先手に不満はない。居飛車穴熊を牽制するのであれば、☗4八飛と回る手は有力だと思う。
【第17図】テーマ図で☗3六歩
◎テーマ図からの指し手③
☗3六歩(第17図)

本記事の最後に、テーマ図で☗3六歩(第17図)と突く指し方を見ていく。☗3六歩の狙いを一言で表すと、居飛車穴熊を牽制している意味がある。この歩を突くことで桂馬の活用が可能になり、穴熊に対する攻撃力が格段にアップする。
【第18図】☗2六歩の局面
◎第17図からの指し手
☖4三金 ☗2六歩
☖3三角 ☗3七桂(第18図)

先手は☗3六歩〜☗2六歩と玉の懐を広げて、後手が☖3三角と上がった手を見てから桂馬を跳ねるのが良いタイミング。後手は☖2二玉と寄れば居飛車穴熊模様ですが、先手の角のラインに入るので危険な意味がある。
【第19図】☗4八飛の局面(先手良し)
◎第18図からの指し手
☖2二玉 ☗4八飛(第19図)

☖2二玉は居飛車穴熊を目指した手ですが、先手の角のラインに入るので危険な意味がある。先手はここで色々な手が見えますが、やはり☗4八飛(第19図)と4筋に飛車を回る手が機敏。第19図では次に☗2五桂〜☗4五歩と仕掛ける狙いがあり先手好調の流れ。
【第20図】☗4五歩の局面(先手有利)
◎第19図からの指し手
☖3二金 ☗2四桂
☖2四角 ☗4五歩(第20図)

☗4八飛に後手はひとまず☖3二金と引き締めますが、先手は構わず☗2四桂と跳ねていきます。角をどこに逃げても先手は☗4五歩と突く。第20図は先手の攻めが決まっている。☖4四歩〜☖4三金と居飛車穴熊を目指した場合、先手は☗4八飛と回る手が急所になりやすい。