相横歩取りの定跡を学ぼうとするのなら、飯島栄治八段の「研究で勝つ!相横歩取りのすべて」が最新の内容となっています。他にも有名なもので「羽生の頭脳9 撃戦!横歩取り」もありますが、1994年の発行となっているので情報が古くなっている部分も多かった。もちろん、基本的な定跡を知るには十分な内容なのですが、最新のAIに探索させると評価がガラリと変わる部分も存在した。
そこで今回私は相横歩取りの最新事情をまとめて、ひとつの記事として取り上げようと思った。相横歩取りの定跡をある程度知っていると言う人は、自身の中の定跡をアップデートさせる目的として活用ください。
相横歩取りの歴史
まず初めに、相横歩取りの歴史について簡単に触れておこう。相横歩取りの歴史は古く、江戸時代にはすでに定跡が存在していたとされる。現在主流の☗4六角(図)と打つ定跡が誕生するのは1985年のことなので、歴史的に見ればかなり新しいと言える。
記録に残る中で最も古い相横歩取りの定跡は、九世名人大橋宗英の「平手相懸定跡集」に記されている。大橋宗英名人の定跡では、飛車交換のあとに☗8八飛(図)と打って、☖8二歩☗8三歩☖7二金(以下略)と進めて先手良しとなっている。
大山流と升田流、昭和の二大定跡
昭和30年代〜40年代にかけて、相横歩取りは頻繁に指されるようになり定跡が発展する。この頃は主に、☗8二歩☖同銀☗5五角☖8五飛☗8六飛(図)の「大山流」と、☗8三飛(次の図)の「升田流」のふたつが主流の定跡として研究されていた。
升田幸三九段の升田流は、☗8三飛(図)と打って竜を作って指す構想。図の☗8三飛以下、☖8二歩☗8五飛成☖2七飛とお互いに竜を作り合うのが当時の定跡だったのですが、後に「決定版」とされる対策が現れてこの定跡は廃ることになる。
大山康晴十五世名人の大山流は、「青野流(図)」の登場とともに完全に消滅することになる。「青野流」と「大山流」の定跡はよく似ているのですが、青野流の定跡は大山流と比べると☗8二歩☖同銀と打ち捨てる一歩を得できているのがわかる。
升田幸三九段の升田流は完全になくなったわけではないのですが、図の☖2七角と打つ手が強敵で徐々に廃れていった。図で先手は☗3六角と合わせるのが最善で、☖同角成☗同竜☖3三桂が定跡。将棋AIの評価値を見てもほぼ互角(先手+100)なので先手が悪いというわけではなさそうですが、わざわざ採用する理由はない作戦と言えよう。
☗7七桂型と☗7七歩型の定跡
次は、先手が序盤で変化する指し方を見ていく。図の☗7七桂は持久戦指向の指し方で、プロでは渡辺明九段がよく採用していた。ここで☗7七銀と上がると激しい変化になるので、こういった変化を嫌う人はこちらの指し方がおすすめ。
☗7七桂には☖3三金と上がるのが定跡で、以下☗8四飛☖8二歩☗5八玉☖2六飛☗2八歩☖5二玉☗3八金☖7二金☗2七歩☖2二飛☗8六飛☖8三歩(図)と進んだのが2013年の棋聖戦第2局☗渡辺明竜王ー☖羽生善治棋聖戦。この定跡では序盤は大体このような図面になることが多い。
☗7七歩型の定跡
図の☗7七歩型は昭和40年代に研究されていた定跡。左辺をガッチリと受けてしまおうという意味ですが、7筋が壁になるのであまりいい手ではない気がする。
☖7四飛には☗同飛と取る手もあるのですが、激しい変化になると☗7七歩の壁型が狭い。なので先手は☖7四飛には☗3六飛と引いて穏やかに指す方が良さそうではある。☗3六飛以下、☖3三桂☗2六飛☖2五歩☗5六飛☖4二銀☗8六飛☖8四歩☗8三角(図)と進んだのが、2015年の電王戦☗村山慈明七段ー☖ponanza戦。形勢は互角くらいですが、うーん...微妙。
飛車交換回避の指し方
もうひとつ、定跡外戦法について書かなければいけない指し方がある。☖7四飛のところで、☗3六飛(図)と飛車交換を回避するのは昔指されていた定跡。激しい流れを避けて、ゆっくり指す方針で手将棋模様になる。
1989年の☗谷川浩司名人ー☖羽生善治五段戦(NHK杯戦)の実戦は、☗3六飛☖8四飛☗8六歩☖2二歩☗2六飛☖5二玉☗4八銀☖7二銀(図)と進んだ。こうなれば一局の将棋としか言いようがないですが、現代の目から見ると先手が不満爆発。現在では、わざわざ飛車交換を回避する必要はなし。
【主流定跡】青野流☗4六角の登場
図の☗4六角は1985年に青野照市九段が初めて指した手。☖8二角☗同角成☖同銀と進んだときに、従来の定跡である「大山流」と比べると8二に打ち捨てる一歩を得できているという意味がある。図で平凡に☖8二歩と受けると、☗8三歩☖7二金☗8二歩成☖同銀☗8三歩☖7三銀☗同角成☖同桂☗8二歩成☖同金☗7一飛と進めて先手優勢になる。
☖8二角と受ける手が多数派
青野流☗4六角に対しては、☖8二角(図)と受けるのが主流の指し方。他にも☖6四歩や☖7三角といった受け方もあるので、順を追って解説していく。図の局面からは、☗同角成☖同銀☗5五角☖8五飛☗8六飛...と進むのが定跡。この手順は終盤までほとんど変化することがないので、通称「一直線定跡」と呼ばれる。
通称「一直線定跡」の研究手順
図の☗8六飛は「一直線定跡」の途中図。現代では当たり前の定跡ですが、この手を初めて指したのは大山十五世名人だということはご存知だろうか。☗8六飛以下、☖同飛☗同銀☖2八歩☗8二角成☖2九歩成☗4八銀☖3八歩☗8一馬☖3九と☗同銀☖同歩成☗同金☖4五角と進んで次の図。
☖4五角の定跡
一気に局面を進めてしまったが、「一直線定跡」の名が表す通り、ここまでほとんど変化がないのでご了承願いたい。☖4五角は先手からの☗6三馬を消して、次に☖6六桂の攻めを狙う一石二鳥の手。対して先手は☗6五飛と打つのが定跡とされているが現代では疑問手。最近では☗7二銀と☗7九歩が有力である。
☗6五飛は定跡なのですが、現代では疑問手。「羽生の頭脳」「研究で勝つ!相横歩取りのすべて」の両著でも、☗6五飛以下☖3八歩☗4九金☖2九飛☗4五飛☖3八歩成☗6八玉で「先手良し」となっているので、実戦でこの局面になった際は注意が必要(汗)。将棋AIの探索で、後手に妙手が発見されて結論が変わっている。
相横歩取りのこの定跡自体、もはや「化石」と言えるほど古いのですが、アマチュアの将棋では見かけるので知っておいて損はないでしょう。☗6五飛以下☖3八歩☗4九金に☖8七銀(図)が妙手で後手が優勢となります。どういう理屈かと言いますと...長くなるので割愛。評価値は後手にプラス700点ほど。
従来の定跡である☗6五飛の結論こそ覆ったものの、それでこの定跡自体が後手有利に変わったわけではありません。☗6五飛に代えて図の☗7二銀と、次に解説する☗7九歩なら先手有利になる。どちらが最善なのかは不明。☗7二銀の局面を少し進めてみる。
☗7二銀に対して☖6六桂は、☗6一銀不成☖4二玉☗6九金で先手優勢。先手は☖6六桂さえどうにかできれば何も起きない。☗7二銀に☖6二金と逃げる手には☗6五飛☖5四角☗6三飛成(図)と突撃して先手有利。この瞬間先手玉はかなり安全なので攻めに専念できるのも大きい。将棋AIの評価値は先手にプラス500点。
もうひとつ、☖4五角には☗7九歩(図)と打つ手も有力。公式戦では2022年に大橋貴洸六段が指したのが最初。大橋六段も実戦ではわずか15秒の考慮時間で指していることから、☗6五飛を研究の上で避けたのだと思う。ちなみにこの☗7九歩と言う手を解説している棋書はない。
◎上の図からの指し手
☖5五桂 ☗5八銀
☖3八歩 ☗同 金
☖2九飛 ☗3九飛
☖2六飛成☗8七歩(次の図)
将棋AIに局面を探索させると図のように進む。将棋AIの評価値は先手にプラス500点ほど振れて「先手有利」を示すが、一生攻めに活用できそうにない自陣飛車を打たされたのはマイナス。先手は攻め駒は、9一の香車と5五の桂馬がいずれ取れそうな形なので足りている。
☖5五角の定跡
図の☖5五角の局面の前例は10局以上ある。最新の将棋は2007年の☗村山慈明四段ー☖真田圭一七段戦だったと記憶している。図の局面から☗7二銀☖3七角成☗6八玉☖7六桂☗7七玉☖5九馬☗7六玉☖7五銀☗同銀☖同歩と進んで次の図。
相横歩取りの「一直線定跡」は、図の52手目の局面で分岐する。ひとつ目が☗6六玉と逃げる手で、もうひとつは☗8五玉と逃げる手だ。☗6六玉は昔からある定跡で、1989年の☗谷川浩司名人ー☖村山聖五段戦で指されている。☗8五玉は昔はなかった手で、☖8六飛☗7四玉☖8一飛☗同銀不成で先手がダメと思われていた。
一直線定跡の結論(1)☗6六玉
先手玉がかなり追い回されているが、☗6六玉(図)の局面は実戦例が数局ある定跡型。図で☖6二金が詰めろで、☗6三銀不成☖8六飛☗7六歩☖同飛☗6五玉☖6四歩☗5五玉☖5四歩...以下後手勝ち、というのが「研究で勝つ!相横歩取りのすべて」の結論。なるほど。確かにこう進めば後手が有望だが...。
じゃあ☗6六玉と逃げる変化は後手勝ち?と言われると、どうやらそうでもないようだ。手順中☖6二金には☗7一飛☖4二玉に☗9一馬(図)という手順で先手が有望、と言うのが将棋AIの答え。1990年当時にも☗7一飛という手は指されていたが、その先の難解な変化で先手の勝ち筋を発見できなかったのだろう。
そもそも☗9一馬に☖5四銀〜☖9五馬(図)と縛った局面が、先手玉が狭すぎて勝ちの局面に見えない。将棋AIの読みでは☖9五馬以下、☗3八香☖3五歩☗3四歩☖4四歩☗8一飛成...と進んで先手にプラス500点ほど振れる。これは実戦で人間が勝ち切れる局面じゃない(汗)。
一直線定跡の結論(2)
☗6六玉の逃げる手では☗8五玉(図)と上に逃げる手も有力で、人間的にはこちらの方が勝ちやすいと思う。まず、図で☖6二金には☗7一飛と打ち、盤上に駒を増やして磐石の体制になる。よって後手は☖8六飛〜☖8一飛と馬を消すことになる。
☖8一飛(図)と馬を消し去った局面。普通は☗同銀不成と飛車を取り返すところですが、将棋AIは☗6一銀成を最善手と示す。☗6一銀成☖同飛☗7三桂☖7二銀☗6一桂成☖同銀☗7一飛と進んだ局面(次の図)を結果図として「一直線定跡」の結論としたい。
図の局面は2007年の☗村山慈明四段ー☖真田圭一七段戦の実戦の局面で、この将棋がそのまま定跡となっている。補足として、手順中☗7三桂に飛車を逃げるのは☗6一金で先手優勢。☗6一桂成を☖同玉と取るのは☗4一飛から詰み。図で☖6二桂には☗7五玉と逃げるのが正解で、☖7四歩には☗6六玉と逃げる。将棋AIの評価値は先手に1000点ほど振れる。
青野流☗4六角に挑む後手
屋敷流☖6四歩
青野流☗4六角に対して☖6四歩(図)と突いたのは、1991年に屋敷伸之六段(当時)が指した手です。☗8二角の直線定跡が「先手良し」と思われ始めた頃に現われた新たな手段である。図で☗6四同角なら☖2八歩☗同銀☖2四飛の反撃で後手良し、と言うのが後手の狙い筋となる。
定跡の自陣飛車
屋敷流☖6四歩には、☗2八飛(図)と打つのが最善手で定跡化された手です。これで、次に☗6四角と出たときに前述した反撃を防いでいる意味があるのだ。図で後手は☖2二歩と受ける手が自然ですが、☖3三桂と突っ張る指し方もある。
☖2二歩の定跡
まずは☗2八飛に対して☖2二歩と受ける変化から見ていこう。先手は狙い通り☗6四角(図)と出る。
◎上の図からの指し手
☖7三角 ☗5三角成
☖5六歩 ☗同 歩
☖3六歩 ☗同 歩(次の図)
馬を作らせた後手は、☖5六歩〜☖3六歩と反撃に出るのが最強の手段。こうすることで、☖2八角成や☖5七飛と攻める筋ができる。手順中「☖5六歩に☗3五馬は?」「☖3六歩に☗2六馬は?」など、気になる細かい変化はあるが長くなるので省略する。将棋AIの評価値は先手にプラス600点ほど振れる。
☖3三桂の定跡
☗2八飛には☖3三桂(図)と跳ねる手も有力。この手は2006年に佐藤康光棋聖が指した手で、☗2一飛成を許すだけに大胆な発想である。
◎上の図からの指し手
☗2一飛成 ☖2八歩
☗同 銀 ☖2二飛
☗同 竜 ☖同 銀
☗8三飛(次の図)
☖3三桂に対して先手は☗2一飛成と竜を作るのが最善だ。☖2二飛の合わせで竜を消されてしまうが構わない。最終手☗8三飛は、竜を作って歩得を主張する指し方。2006年の王将戦で、先手の羽生善治王将は☗8三飛ではなく☗3六歩と指していてこれも有力。
飯野流☖7三角
続いては、☗4六角に☖7三角(図)と打つ変化をご覧いただこう。この手は2000年に飯野健二七段が指した新手で、☖8二角、☖6四歩に次ぐ後手第三の手段である。従来の☖8二角の定跡と比べて角を合わせる位置を変えたのが工夫で、手順に桂馬を捌こうという狙いがある。
◎上の図からの指し手
☗同角成 ☖同 桂
☗5五角 ☖6五桂(次の図)
☖7三角に対しても先手は☗同角成と取る。再度☗5五角と打ち直すのも従来の定跡と同様だが、そこで☖6五桂(図)と反発できるのが☖7三角と打った効果。図で☗1一角成は☖5七桂不成が厳しいので、先手は一旦☗6六銀とかわす必要がある。
◎上の図からの指し手
☗6六銀 ☖2八歩
☗同 銀 ☖2七歩(次の図)
後手からは☖2八歩☗同銀☖2七歩(図)の連打が唯一の攻め筋となる。図で☗同銀なら☖2八飛☗3八銀☖2七角で後手の攻めが続くので銀を引く一手になる。
◎上の図からの指し手
☖9五角(次の図)
2筋に細工を施した後手は、続いて☖9五角(図)と遠くから角を放つ。単純な王手だが、☗7三角成の王手を防いでいる意味がある。図で①☗7七歩は☖5七桂不成☗同銀☖8五飛、②☗8六歩の中合いには☖2八歩成☗同銀☖5七桂不成☗同銀☖2五飛で技が掛かる。
☖9五角には☗4八玉と逃げるのが正しい受け方。今度☖5七桂成なら、☗同玉と取れるので何も起きない。☗4八玉では、☗5八玉と真っ直ぐ上がった方がバランスが良く見えるが、これには☖3八歩の叩きが厳しく後手が良くなる。
◎上の図からの指し手
☖5七桂成 ☗同 玉
☖3八歩 ☗4八銀
☖6九飛(次の図)
図の☖6九飛に対して、☗5八金☖2九飛成☗5四歩☖同歩☗1一角成と進んだ将棋がある。先手を持っていたのは広瀬章人八段で、現在でも残る定跡となっている。確かにこれでも先手が良いが、将棋AIは図の☖6九飛には☗9六歩を最善手と示す。
金を一枚とボロッと取らせて勝てるのか?と思うだろうが、☗9六歩以下、☖4九飛成☗9五歩☖5八金には☗4六玉と上がり、☗7三桂の一発で後手玉を仕留めてしまおうという読み筋らしい。うーん...。とても人間の指せる手ではない。
森内流☖8六歩
次は☗4六角に☖8六歩(図)と垂らす手を解説する。図の☖8六歩は2005年に森内俊之名人が指した手。この手自体は1990年発行の「定跡百科(10)横歩取りガイドⅡ」にも詳しく載っており新しい手ではないのだが、公式戦の登場は2005年とやや間が開く。
☗8八歩と受ける手には、☖8七歩成と成り捨てて☖8二歩と打つ狙いがある。公式戦1号局の☗羽生善治四冠ー☖森内俊之名人戦(2005年/名人戦)で、先手の羽生四冠は☖8六歩を☗同銀と取ったがあまり良い手ではなかった。ぼんやりとした垂れ歩に対して、先手の正しい応手は...。
後手の狙いに踏み込む
☖8六歩に対して、先手は☗8八歩と平凡に受ける手が最善手。後手は狙い通り☖8七歩成〜☖8二歩(図)と角のラインを受ける。単に☖8二歩と受けた場合と違って、図の局面で先手は☗8三歩と打つことができない。先手の角が空を切った状態になってしまい、後手の言い分は通ったように見える。
攻めの急所がなくなってしまったところで、先手は一度☖2七角を防ぐために☗3八銀(図)と上がる。人の目からすると☗3八金の方が良く見えるが、将棋AIは☗3八銀を最善手と示す。☖2八飛と打たれる傷を残すが、この手の意図は果たして。
ちなみに、この局面を解説している著書を全て調べたが、「横歩取りガイドⅡ」「羽生の頭脳9」「乱戦!相横歩取り」「決定版!横歩取り完全ガイド」、この全てで☗3八金で先手指せると書かれている。やはり人間の目からすると、☗3八銀は直感的に読みから外す手なのだろうか。
真田流☖2七角
青野流☗4六角の最後に、後手が☖2七角(図)と打つ手を解説しよう。この手は2007年に真田圭一七段が指した手で、次に☖4九角成から一気に攻め潰そうという迫力のある手である。飯島八段の本「研究で勝つ!相横歩取りのすべて」では、ここで☗2八歩が最善だと書かれているが果たして...。
【☗9一角成】勝ちを読み切った最善手
飯島八段の研究通りここでは☗2八歩と受ける手も有力ですが、将棋AIにこの局面を探索させると☗9一角成(図)を最善手と示す。後手は当然☖4九角成から猛攻を仕掛けてくるのですが、それでも先手の寄せが早いと言っている。
☖2八歩の変化
角を切り飛ばした後手が攻めを継続するには①☖2八歩と②☖3八歩しかない。まずは☖2八歩(図)と打つ手から調べる。
◎上の図からの指し手
☗8一馬 ☖2九歩成
☗4八銀(次の図)
☖2八歩には☗8一馬が最善で、☗4八銀(図)とかわした局面は先手が優勢になっている。将棋AIの評価値を見ても、先手にプラス1000点ほど振れる。一例として、図で☖6九飛には☗5八玉☖8九飛成☗8八金で先手優勢となる。
☖3八歩の変化
☖2八歩と打つ変化は、☗8一馬と攻め合って先手が優勢になる。今度は☖3八歩(図)と銀取りに歩を打つ変化を調べる。
☖3八歩には☗同銀(図)と取る手が正解で、将棋AIによる評価値を見ると先手にプラス800点ほど振れる。この瞬間は先手にとって恐い局面で、ひとつ間違えるだけで形勢は逆転する。
◎上の図からの指し手
☖2八金 ☗8一馬
☖3九飛 ☗5八玉
☖3八飛成☗6九玉
☖4九竜 ☗5九香(次の図)
まず先手が気になるのが☖2八金〜☖3九飛の筋。これには無理やり受けようとせず、☗8一馬と桂馬を補充しておくのが最善。王手の連続で駒をボロボロ拾われてしまうが、それでも先手が優勢なのだと言う。詰む詰まないまで研究しなければどうにもならない変化ですが、まあとにかく先手が勝ちらしい。